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【Rain On Me】歌詞を考察!「津波」は本当に不謹慎なのか?

5月22日、Lady GAGA(レディーガガ)の新曲「Rain On Me」が発表されましたね!Ariana Grande(アリアナ・グランデ)とコラボした今作、YoutubeでのMV再生回数はすでに1億回を突破。今年を代表する曲になることは間違いありません。

そんな中、日本人の間では、歌詞に出てくる「Tsunami(津波)」というワードが話題になっています。

「正直、不快」「津波のイメージが正しく伝わっていない」というネガティブな意見や、「ただリズム感がいいから入っているだけなのでは?」といった意見も…

しかし、個人的にですが、この曲をそういった風に捉えるのはかなりもったいないと考えています。なぜなら、ガガが「Tsunami(津波)」という言葉を使ったのには、明確な意図があると考えられるからです。

というわけでこの記事では、「Rain On Me」を分析し、ガガがなぜ歌詞に「津波」を入れたのかを考察していきたいと思います。

そもそも「Rain On Me」ってどんな曲なの?

「Rain On Me」は、歌詞だけを読むと、悲しみにくれる歌です。

I didn’t ask for a free ride
(遊び相手が欲しかったわけじゃない)

I only asked you to show me a real good time
(ただ楽しい時間を過ごせればと願っただけ)

何があったのかは分かりませんが、ただ楽しく過ごしたかっただけなのに、悲しいことが起きてしまった…という出だしです。

そして雨が降る。つまり、悲しみの中にいる真っ最中ということになります。

ただ単に、悲しみに暮れる曲ではない

でも、曲調は悲しいどころか、とてもパワフルでかっこいい!MVではキレキレのダンスが話題です。

MVの2:30〜では、2人で手をつないでくるくる楽しそうに踊っています。

まるで雨が降るのが嬉しいとでも言いたげです。

そもそも、タイトルにもなっている「Rain On Me」は、歌詞の文脈にそって訳すと「雨よ、私にもっと降りなさい」という意味になります。

童謡でいえば、「あ〜めあめふ〜れふれもっとふれ〜♪」ですね。

こうなると、結局悲しいのか楽しいのか、どっちを表現したい曲なんだ?…と混乱してしまいますね。

しかし実は、ガガはTwitterでこの曲の背景について述べていて、そのツイートを見れば「Rain On Me」がどんな曲なのかが、理解しやすくなります。

悲しみと戦うのではなく、それを力に変える!

そのツイートがこちら。

ある時、あまりにも泣きすぎて、もう止まらないかもって思うことがあった。でも、その悲しみと戦う代わりに、「かかってきなさい」「どんなことでもできる」って思うようになった。アリアナ、私は強さと友情に誓ってあなたを愛している。みんなに目にもの見せてやろうじゃない。

つまり、「悲しみを感じるだけではなく、逆に力にして前に進んでいく!」という想いで作られた曲だということが分かります。

このことを前提に、歌詞中の「Rain(雨)」が何を表しているのか、さらに深く見ていきましょう。

歌詞中の「Rain(雨)」が暗喩するものとは。

MVを見ても、雨は「涙」の比喩であることは明らかです。

同時に、ガガはインタビューで「悲しみを紛らわすために、浴びるように摂取していたアルコールの量」でもあると語っています。

こちらの動画の34:00〜から、このように語っています。

And you know what it’s also a metaphor for, is the amount of drinking that I was doing to numb myself.
それから、「雨」は私が自分を麻痺させるために飲んでいたお酒の量の比喩でもあるの。

そうなると、印象的な次のフレーズの意味がなんとなく分かってきます。

I’d rather be dry, but at least I’m alive
(乾いてたいけど、少なくとも私は生きている)

Rain on me
(雨よ降れ)

本当は飲んでいたくなんかないけど、いくら飲んでも死なない。生きている。もういい、まだ飲み続けよう。雨でもなんでも降ってきなさい。

お酒をやめて正気に戻ると、悲しみが襲ってきてしまう。お酒をやめずに飲み続けていると、苦しいけれど、不思議と生きる気力は湧いてくる。

闇がなければ光はないのと同じように、悲しみや苦しみがあるからこそ、喜びを見いだすことができる…そんな風に解釈できます。

しかし、雨が表しているのはこれだけではありません。もっと深く知るために、キリスト教の観点から考察してみましょう。

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神がもたらす恵みの雨、あるいは精霊

まず、ファンの方はご存知かもしれませんが、ガガは敬虔なキリスト教徒です。

「Judas」のMVで批判を受けたとき、「宗教的なものではない」と答えていたが、これは決してキリスト教徒ではないという意味ではありません。

マンハッタンのカトリック系私立学校、聖心女子学院の出身でもありますしね。大方の曲において、確信犯的にキリスト教の要素が取り入れられていると思います。それを語り出すと長くなってしまうので、今回は置いておくとして…

そもそもキリスト教では「水」は重要な要素です。

有名なのは「聖水」でしょう。洗礼の際には聖水を頭からかけられたり、悪魔払いに用いられたり。「罪を洗い流す」日本風に言えば「穢れを祓う」という意味があったりします。

さらには、「雨」は神の霊、すなわち「聖霊」の象徴として語られることもあります。神が私たちにくださる恵み、「恵みの雨」という意味ですね。

いずれにせよ、水や雨というのは、ある種「神の領域」であり、人間がコントロールできないものともいえます。

ところで、人間がコントロールできないタイミングで襲ってくるものいえば、何でしょうか?

そう、キリスト教の視点から歌詞を考察してみると、こうした「予期せぬタイミングで襲いくる困難」を「雨」として表現している、とも考えられるのです。

困難を乗り越えてきた二人の決意表明

人生には、思いもよらない悲劇が襲ってくるときがある。それは突然の雨のように…

「予期せぬタイミングでの困難」と聞いて思い起こされるのは、やはりアリアナのマンチェスターで行われた公演で起こった、自爆テロ事件です。

この曲が発表された5月22日は、まさにこの事件が起こった日なのです。

さらに、「雨」が困難を表す証拠としては、MVの一番最初のシーン。ガガに向かって、ナイフが雨のように降ってきますよね。

突き刺さるような痛み、悲しみ…困難以外の何でもありません。

最初に書いた通り、「Rain On Me」は、「どんな雨でも、かかってきなさい!」という意味でもあります。つまり、「私たちはこれからも、どんな困難(雨)にも負けない!」という二人のディーヴァによる決意表明、宣言なのです。

ガガはなぜ「Tsunami(津波)」を歌詞に入れたのか?

ガガは、東日本大震災では真っ先に支援を表明したアーティストのひとりです。その動きは、日本人アーティストよりも早かったくらいです。

そんな彼女が、実際に体験したわけではなくても、津波がどんなに悲惨な状況をもたらしたか、知らないわけはありません。

だからこそ、ただ単にリズム感がいいからというだけで、歌詞に「Tsunami(津波)」を入れたとは思えないのです。

「津波」が恐ろしい天災だと理解しているからこその歌詞

日本語が使われて不謹慎だ、と批判された欧米の曲といえば、「TakiTaki」が有名ですね。

「Taki Taki」での「Nagasaki」は、確かに歌詞の文脈から見ても、リズムだけで入れている感がありました。「あ〜やっぱり、アメリカ人の原爆に対する意識って、そんな程度なのね…」と、残念な気分になるのは間違いありません。

しかし、これまで考察してきたように、「Rain On Me」はただ単に「アゲアゲで踊ろうぜ!」という曲ではありません。

「どんな困難(雨)にも負けない」という二人のディーヴァによる決意表明です。

「Rain On Me Tsunami」は、確かにそのまま訳すと「津波のように降りなさい」です。しかしこれは、「津波ほどの困難であっても私たちは乗り越えてみせる」という意味である、とも解釈できます。

つまり、津波が恐ろしい天災だと理解しているからこその歌詞であるといえるのです。

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「不謹慎」と決めつけるのは、逆に失礼では?

ですから、単語と曲の表面のイメージだけで、「不謹慎だ!」と決めつけてしまうのは、あまりにももったいないと、個人的には思います。むしろ、そう決めつけるのは、ガガとアリアナに対して失礼になってしまうような気がしています。

とはいえ、自分も実際に大震災を経験したわけではありません。単語を聞くだけでも嫌だし、ストレスになるという方もいるかもしれませんね。

ただ、この曲の成り立ちや、2人のこれまでの困難や曲に対する想いを考えると、浅い理解で「Tsunami(津波)」という言葉を使っているのではない、ということが分かります。

そんなわけで、この曲をネガティブに捉えてしまった方も、違う視点で、ぜひ「Rain On Me」をもう一度聞いてみてほしいなと思います。