テレビ東京系列で20年に渡り放送されてきた「美の巨人たち」が、2019年4月にリニューアル。「新美の巨人たち」として生まれ変わりました。
残念ながら、ネットでの評判はすこぶる悪く、「改悪」「つまらない」「元に戻してほしい」といった声が多いようです。
一体なぜ、ここまで評判が悪いのか?正直、私も少し残念に思う部分はありました。そこで今回は、番組がどうリニューアルしたのかを紹介しつつ、評判が悪い理由を自分なりに考察してみることにしました。
Contents
「新美の巨人たち」はどうリニューアルした?
もともとの「美の巨人たち」はどんな番組?
もともとの「美の巨人たち」は、美術界の巨匠が制作した絵画や彫刻、建築物といったアートを、「今日の一枚」と題して紹介する番組でした。
間に挟まれる軽妙な小話や小芝居が特徴的で、真面目になりがちな美術教養番組でありながら、親しみやすく、思わず見入ってしまうような魅力的な番組でした。
また、小林薫さんの渋くて落ち着いたナレーションも、人気だった理由のひとつですね。「新美の巨人たち」では、残念ながら降板となりました。
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リニューアルした「新美の巨人たち」はどんな番組?
一方、リニューアルした「新美の巨人たち」ですが、公式サイトでは、このように説明されています。
美術鑑賞は本来自由なもののはず。知識があるなしに関わらず、作品を見た者が思いついたことを口に出したり、意見を交わしたり…。
この番組では、旅人=アートトラベラーが、毎回作品が展示されている美術館や建築物、ゆかりがある場所などへ足を運び、作品の秘密や、アーティストの人生に迫り、より豊かな美術鑑賞の旅へと視聴者を誘います。
アートトラベラーが作品に向き合ったときに、果たして何を思い、何を感じ、何を語るのか?彼ら独自の見方・見え方にぜひご注目下さい。
30分の番組をみた後、もしかしたら世の中の見え方が変わるかもしれません。旅の情報、作品へのアクセスもていねいに伝えます。
もっと簡単に説明してしまうと、アートトラベラー(=タレントたち)が美術館などを訪れて、作品について感じたことを語る、という旅番組のようなスタイルです。
アートトラベラーという存在についての考察もしてみました。

「新美の巨人たち」が不評な3つの理由
構成が大きく変わった「美の巨人たち」。ツイッターを見ると、批判の嵐です(^^;)私は、こうした不評の理由は、主に3つあると考えました。
(1)主役が作品ではなくなった
まず、「美の巨人たち」の人気を支えていたのは、ひとつの作品が主役となる番組構成だったのではないかと思います。
毎回、取り扱う作品に対し、真偽はともかくとして、ひとつの答えや教訓を用意し、それを小林薫さんが朗読する。合間に、軽妙な小芝居を交えながら。こうした構成は、作品にまつわる物語がよく伝わってきて、他の美術系番組とは一線を画していました。
新しくなった「新美の巨人たち」は、作品というよりは、タレントの感想が中心となって展開されていきます。これはもう、別の番組になったと言ってもいいくらいの変化ですよね。
明日の「新・美の巨人たち」は、
クロード・モネの「睡蓮の池」。
直島、地中美術館で又吉直樹が真剣勝負。
ぼんやりとした不思議な一枚には、
睡蓮を何百枚も描き続けた、
最晩年の画家がたどり着いた究極の表現が…。
モネが睡蓮の池に見たものとは一体?— 美の巨人たち (@binokyojintachi) 2019年4月5日
にも関わらず、従来の番組名に「新」をつけて、さも同じ構成の番組かのような見え方にしてしまったのは、ちょっとまずかったんじゃないかな〜と思います。全然違う番組名だったら、ここまで批判されることはなかったんじゃないでしょうか。
(2)雰囲気が落ち着きすぎ
「美の巨人たち」は、作品を説明する際、に小話や小芝居が差し込まれていました。キャスティングもきちんとイメージに合わせていて、とても力が入っていたという印象があります。
そして、この劇中ドラマからは、「絵画警察」「モデュロール兄弟」「喫茶店のマスター」など、数々のキャラクターたちが生まれました。真面目になりがちな美術教養番組に、くすっと笑ってしまうような親しみやすさを与えてくれる、「美の巨人たち」ならではの存在です。
美の巨人達のゆるキャラ、その名も『モデュロール兄弟』 pic.twitter.com/n0jJhkzhOP
— じょー仁田厚 (@JoJo_da_Jo) 2014年8月10日
「新美の巨人たち」では、こうしたキャラクターたちによる小芝居が一切なくなり、独特の軽妙さが消えてしまったように思います。基本的に、アートトラベラー(=タレント)をカメラが追うという旅番組スタイルなので、かなり落ち着いた雰囲気です。
個人的には、これじゃ「日曜美術館」とあまり変わらないんじゃ…?と思ったりもしました(^^;)
(3)ナレーションが小林薫じゃない
やっぱり、長年ナレーターを担当していた小林薫さんが降板してしまったというのは、評判が悪くなってしまった理由のひとつだと思います。
何しろ、20年もずっと小林薫さんが担当していたのです。いきなり違う人に変わって、「これも同じ美の巨人たちです!」って言われても、ずっと見続けてきた人からしたら、納得できないのも無理はないかもしれません。
美の巨人たち、ほんまにその作品を見てる感覚になって好きやったのに…。
旅人が出てきたら、そんな感覚になれへんわ。
小林薫を返して〜#美の巨人たち #新美の巨人たち— ラーテル (@N4ynZBDkIn7I2FE) 2019年4月6日
又吉さんも市川さんも嫌いじゃないのだけれど、わたしが欲しいのは小林薫さんと神田沙也加ちゃんがナレーションする淡々として時にユニークな、芸術にスポットが当たった『美の巨人たち』なの。わたしの土曜日を返して…。
— たこやき (@kodoraku) 2019年4月6日
新美の巨人たち、一応観てみたけどダメだった。やはり小林薫と神田沙也加の声が聴きたい。ビジュアル的には面白い部分もあったけどBGM邪魔だし構成も好きじゃない。全然作品世界に入っていけない。ほんと別物になってしまった。
— ひむひむ (@himuro_ccc) 2019年4月8日
私も、「美の巨人たち」といえば小林薫さん、というイメージでした。小林薫さんを起用せず、番組構成も変えるのであれば、番組タイトルは全く違うものにするべきだったんじゃないかな〜と思います。
なぜ「美の巨人たち」はリニューアルしたのか?
そんなわけで、残念ながらすこぶる評判の悪い「新美の巨人たち」ですが、そもそもなぜリニューアルしたのでしょうか?公式サイトやツイッターには、「20周年を迎えたから一新した」といったニュアンスで書かれています。
しかし、それ以外にも理由があるような気がします。私の予想は、次の2つの理由です。
(1)小林薫さんがナレーターを辞めるから?
長年、ナレーターを務めてきた小林薫さんですが、20周年、そして平成の終わりが重なったタイミングで、辞めるのにキリがいいと思っていたのかもしれません。
こちらの記事にも書きましたが、やめさせられたというよりは、ご本人が、そろそろ次の世代にバトンを渡したい、と思われていた可能性もあります。

番組側としては続投してほしかったが、小林さんが辞めるということなので、思い切って番組の構成も変えてしまおう…という流れだったのかも?と予想しました。
(2)海外ロケの予算を節約するため?
もともとの「美の巨人たち」は、30分という短い番組であるにも関わらず、きちんとその作品がある現地でのロケが行われていたのが印象的でした。
ただ、やはり海外でのロケはお金がかかります。しかも、作品を撮影するのに許可もいるし、通常の番組よりもかなり手間暇がかかっていたんじゃないかと思われます。
今週の美の巨人たちは・・・
「ミラノ大聖堂」
1月12日(土)夜10時からテレビ東京系列にて。 pic.twitter.com/xyRVNiQfd9— 美の巨人たち (@binokyojintachi) 2019年1月10日
「新美の巨人たち」も、タレントを大勢起用して、その分お金がかかりそうです。でも、新しくなった番組の構成は、基本的に美術館を訪れるタレントを撮影すればいいので、もともとの「美の巨人たち」よりも、実はあまりお金がかからないのかもしれません。
新しくなった「美の巨人たち」の良い点
ここまで、「新美の巨人たち」が批判される理由ばかりを書いてきました。ただ、私はこの番組が全くおもしろくないとは思っていません。
確かに、残念な部分は多々ありますが、全く新しい番組として見れば、なかなかおもしろいと思っています。そんなわけで、私が思う「新美の巨人たち」の良い部分もピックアップして、ご紹介したいと思います。
(1)自分にはない視点を取り入れられる
「新美の巨人たち」では、アートトラベラーたち(=自分以外の人)の見方や感じ方を知ることができます。つまり、自分にはない視点を取り入れられる、というのが良い点だと思います。
美術作品を見ていると、自分なりの感想や意見を持ちますよね。でも、ひとりで見ていると、それ以上の感想が思い浮かばなかったりします。そんなとき、他の人の意見を取り入れることで、見方の幅が広がったり、その後他の作品を解釈するときの考え方も、変わってくるかもしれません。
つい凝り固まってしまいがちな自分の視点をほぐす。そういう意味で、「新美の巨人たち」を見てみるのが、良いかもしれません(^^)
(2)美術に興味を持つ人が増えるかも
もともとの「美の巨人たち」は、アート好きな人からすると、めちゃくちゃおもしろい番組でした。でも一方、あまりアートに興味がなかったり、苦手意識がある人は、とっつきにくい感じもあったかもしれません。
一方、「新美の巨人たち」にはタレントが出てきます。このタレントさんたちが好きな人は、アート自体に興味はなくても、番組を見ようとするかもしれませんよね。
どんなにいい作品があったとしても、まずは知られていなければ、評価もされません。この番組を通して、美術を知り、興味を持つ人が増えるかもしれない。そういう意味でも、「新美の巨人たち」は価値のある番組だと感じます。
過去の放送はどこで見れる?本はあるの?
「美の巨人たち」の過去の放送は、オンデマンドサービス、もしくはDVDで見ることができるようです。以下に情報をまとめておきますね。
通常放送は「Paravi」で
これまでの通常放送は、「Paravi」というオンデマンドサービスが独占配信しているようです。月額925円(税抜)で、見放題。30日間無料で体験できます。
番組リニューアルを機に、過去作をすべて見返してみるのも、いいかもしれませんね。
DVD10巻セット
DVDは全10巻セットが、ユーキャン通販ショップで販売されています。
過去すべての放送が入っているわけではなく、日本人画家20人の20名画を厳選したセットのようです。
ちなみに、公式サイトには「現在のところ新たにDVDやビデオ化する予定はありません」と書いてありました。作品の著作権などの関係もあるのかもしれませんが、残念ですね…(涙)
「美の巨人たち」単行本は2冊
ちょっと昔になってしまいますが、「美の巨人たち」は本も2冊出版されています。
まとめ
というわけで、リニューアルした「新美の巨人たち」の評判についてまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?
個人的には、残念な気持ちもある一方、これからの「新美の巨人たち」も楽しみです。まだ第1回目しか放送されていないですし、番組構成も今後変わってくるかもしれないですしね。
オシャレ感が強くなったので、ゆるキャラたちが出てこれる雰囲気ではなさそうですが…もしかしたら、今後出てくるかも!?(^^;)なんて期待しつつ、新しくなった良い部分にフォーカスしながら、見続けたいと思います。