今月からリニューアルした「新美の巨人たち」。又吉直樹さん、貫地谷しほりさんに続いて、明日4月20日の放送では、俳優の井浦新さんが登場します。
これまでも、リニューアルした番組が不評の理由を考察したりして、あとはもう静かに番組を見続けようと思っていたのですが…

NHKの「日曜美術館」元司会である井浦新さんが登場ということで、その意味についてどうしても考えたくなってしまいました。
というわけでこの記事では、「新美の巨人たち」になぜ井浦新さんが起用されたのか、アートトラベラーという存在の意味と番組の行く末を、自分なりに考察してみました。
Contents
「新美の巨人たち」に井浦新が起用された理由は?
まずは、「新美の巨人たち」に井浦新さんが起用された理由を、自分なりに考察してみたいと思います。
井浦新はNHK「日曜美術館」の元司会だった
美術が好きな方なら、NHKの番組「日曜美術館」をご存知だと思います。そして実は、井浦新さんは「日曜美術館」のキャスターを、2013年4月から5年間にも渡って努めていました。
2014年8月には、本も出版されています。
昨年の2018年4月、番組を卒業していますが、毎回雰囲気の違うファッションとヘアスタイル、そして仏像や日本画などが本当に好きだという気持ちが伝わってくるようなコメントで、人気だったように思います。
[明日放送の番組]『日曜美術館』卒業の井浦新が最後の「美の旅」へ アニミズムから生まれた美を探求https://t.co/rKMVJF66MH#井浦新 pic.twitter.com/I9fLmqo9kl
— CINRA.NET カルチャーメディア (@CINRANET) 2018年3月17日
「日曜美術館」の視聴者を引き込むため?
ではなぜ、そんな井浦新さんが「新美の巨人たち」に起用されたのか?それはやはり、まずは「日曜美術館」での経験を買われたと考えるべきでしょう。
そしてもうひとつ、井浦新さんを起用することで、「日曜美術館」を見ていた視聴者たちを「新美の巨人たち」に引き込みたい、という考えがあったのではないかと、私個人は予想しています。
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さらに、もうひとつ理由があると考えているのですが…その前に、「新美の巨人たち」で新たに加わった「アートトラベラー」という存在について整理したいと思います。
なぜ、新番組にはアートトラベラーが存在するのか?
「美の巨人たち」はリニューアル後、週替りで「アートトラベラー」なる存在が旅をして、作品について語っていくスタイルになりました。
そもそもアートトラベラーって何?
「美の巨人たち」を昔から見ていた人たちは、「アートトラベラー」って何?そもそも必要ある?って思われている方が多いんじゃないかと思います(笑)公式サイトでは「旅人=アートトラベラー」とされています。
「旅人が、作品が展示されている美術館やゆかりのある場所に足を運び、作品の秘密やアーティストの人生に迫る」という構成上、番組の主役は、今までのように作品そのものではなく、アートトラベラーたちになります。つまり、リニューアルした「新美の巨人たち」の構成では、アートトラベラーたちはなくてはならない存在なわけです。
公式サイトで紹介されているアートトラベラーたちは、こちらの5人です。
出典:新美の巨人たち 公式サイト
- 又吉直樹(芸人・作家)
- 貫地谷しほり(女優)
- 井浦新(俳優)
- 要潤(俳優)
- シシド・カフカ(ミュージシャン・女優)
ナレーターは、小林薫さんと神田沙也加さんの2人体制から、市川実日子さんの1人体制となりました。

本当に「多様な視点」だけが目的なのか?
そもそも、こんなに人数いるのか?なんて考えたりもしちゃいますが…
5人だと、1週間に1度の放送なので、1ヶ月の間に同じ人物が出演するということはなくなりますよね。そこから考えると、「美術を様々な視点から見る」=「様々な人の意見を聞く」という意味で、5人という人数になったのではないかなと思います。
しかしながら、本当に「多様な視点」だけが、この5人を選んだ目的なのでしょうか?もしそうなのであれば、別に芸能人じゃなくたっていいはずです。
私は、この5人が選ばれたのには、「多様な視点」以外にも、3つの理由があると考えています。ただし、あくまで個人が勝手に想像しているだけですので、そこはご留意ください。
(1)美術に興味のない人にも見てもらうため
好きな芸能人が出ていると、そんなに興味がない内容でも、思わず見てしまうときってありますよね。「新美の巨人たち」に芸能人たちが起用されたのは、やはり今まで全く美術番組を見たことがない人たちにも見てもらいたい、という願いが根底にあるのではないかと思いました。
特に美術番組って、小難しくて、センスのある人じゃないとわからない…みたいなイメージが強いと思うんです。リニューアルする前の「美の巨人たち」は抜群におもしろい番組だったのですが、少なくとも私の周りで見たことのある人はほとんどいませんでした。
たとえば、美術番組をほとんど見たことがないけど、貫地谷しほりさんが好きだという人が、このツイートを見つけたらどうでしょう?
明日の「新・美の巨人たち」は、 ジョサイア・コンドル作「ニコライ堂」。
いつ建ったのか?なぜその名で呼ばれているのか?
アートトラベラー、貫地谷しほりさんが 神田駿河台に佇む、美しき聖堂の秘密に迫ります。— 美の巨人たち (@binokyojintachi) 2019年4月12日
ニコライ堂に興味はなくても、とりあえず見てみるんじゃないでしょうか?(笑)やっぱり、芸能人の力って本当にすごいんだと思います。
(2)若い層の視聴者を獲得するため
もうひとつの大きな理由は、若い層の視聴者を獲得することなのではないかと考えています。5人とも、比較的若い人たちに人気のある方たちばかりのように思います。
特に、シシド・カフカさんは、今どきの若者が憧れる女性のひとりですよね。シシド・カフカさんのようになりたい!と思う人たちが、美術を見る視点を真似するために、番組を見ようとする可能性もあります。
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また、井浦新さんは昨年放送されたドラマ「アンナチュラル」の中堂役で、今まで以上に人気と認知度が高まりました。特に、若い女性のファンが増えたんじゃないでしょうか?
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(3)ライバル番組から視聴者を引っ張ってくるため
最後に予想した理由は、最初に井浦新さんの項目でも書いたとおり、ライバル番組から視聴者を引っ張ってくるためです。
美術番組って、そんなに数がありません。視聴者も、コアなファンばかりです。だからこそ、一度人気を獲得すれば、長く番組を続けることができるという考えが制作側にあるんじゃないかと、予想しています。
2019年は、美術番組の歴史の転換期かもしれない
ここまで「新美の巨人たち」のアートトラベラーという存在についてつらつらと書いてきましたが、つくづく、これは大きな変化だったなと思います。
「美の巨人たち」のリニューアルはやっぱり衝撃的すぎた
冒頭で紹介した、不評に関する考察の記事にも書きましたが、やっぱり「美の巨人たち」のリニューアルは衝撃的でした。全く別の番組といってもいいくらいの変わりようだったからです。
それがすべて悪いとは思わないのですが、今までずっと変わらなかった「美の巨人たち」の変化は、すなわち美術番組の歴史そのものの変化とも言えると思います。ちょっと大げさすぎますかね?(笑)
いい面もあるとは思いますが、個人的には、芸能人が美術を語るというスタイルばかりで、それこそ多様性が薄れてしまったな〜なんて感じています。
若い視聴者層が増えて、番組が変容する可能性も
しかし、この記事でも考察した通り、リニューアルした「新美の巨人たち」からは、新しい視聴者層を獲得しよう!という意気込みが感じられます。
何かを得るには、何かを手放さなければならないときもある。それが正解か不正解かは、やってみないと分かりません。
今後、その目論見通りに視聴者が増えて、番組に対する意見がたくさん寄せられるようになるかもしれません。そしてもしかすると、制作側が視聴者の意見を取り入れて、番組の構成を変えることだってあるかもしれない、なんて思っています。
新たな時代に向かっていく番組を見守っていきたい
失った部分はあるものの、リニューアルした「新美の巨人たち」からは、新たな時代に向かっていこうとする意欲も感じられます。井浦新さんをはじめとしたアートトラベラーたちもきっと、新しい番組を良いものにしようという思いで、撮影に臨まれているのではないかと思います。
「美の巨人たち」のファンだったので、あれやこれやと書いてしまいましたが…(^^;) 制作側や出演者の方々の想いによっていい方向に進むことを祈りつつ、これからも「新美の巨人たち」の行く末を見守っていきたいと思います。